そのとき、ぷるぷるとポケットにいれた携帯が揺れた。
「電話だ。」
あたしをおいてふらふらと部屋を出ようとするお兄ちゃんが横目に見えた。
あ、彩乃ちゃんだ。
どうしたんだろう。
「もしもし、彩乃ちゃん?」
そうあたしが言ったとたんにお兄ちゃんはぐるっとあたしの方を向いた。
まるで、なんでお前に、とでも言いたげな表情だ。
『あのね、あの……悠輔、いるかな……』
遠慮がちに発せられた言葉には不安が含まれていた。
ようやく名前で呼ぶようになったのか、なんてにやにやがこぼれそうになりながら、
「うん、今日は一日中家にいたよ?」
『そっか……悠輔、電話繋がんなくて…、凪ちゃんにかけちゃったんだけど……』

