『彩乃のことです。あの、聞いたんですけど…────』 それから絢が話したのはあの朝のことだった。俺が彩乃を無視するみたいな状態になってしまった、あの朝。 『…ということだったんですけど本当ですか?』 絢の声は、低く冷たい声で本気で問い詰めてきているのがわかる。 「…違うんだ…俺…」 その先は言葉にならなかった。 違わないから。 違わないんだ、俺がしたことは。 彩乃を、傷付けたんだから。