「どうしてコレ、使わせてくれなかったの。邪魔なら、排除してしまえばいいのに。」

「…………嫌いなだけだ。」


静かに、彼――鶴来さんと目が合う。“鶴来悠貴”という、本当の彼を見た気がした。


ふっと目線を反らした先には、あたしが「コレ」と言った銀刃のナイフ。

鬱に見える、彼の横顔。


「――人が死ぬのを見るのが、嫌いなだけだ。」


何か、音が聞こえた気がした。心臓が軋んだ音か、血の滴る音だったのかは、分からない。