――あたしは“勝てる”はずだった。彼の顔に亀裂が入ったのを見て、確信したはずだった。


カラン、と乾いた甲高い音が響く。


その1秒後、あたしは床に座り込んでいた。いきなり彼に腕を引っ張られ、体勢を崩したのだ。

そして、目を見開く。

鶴来さんが、勝利の笑みを浮かべていた。


「なら“武器”なんか使わずにお前を傷つける。だからお前は――」


音もなく、落ちたナイフを彼は拾い上げた。そして笑みを濃くし、あたしの“手の中にそれを握らせた”。