一旦離れていた彼の距離が、再び縮まる。あたしはやはり、頭の中が真っ白だった。 ただ、目の前のナイフが赤に染まるのを想像した。 『……明津、たすけて…』 絶対に、思い出さないでいようと思ったのに―――。 やっぱり、この人は大嫌い。でもこれから、この人に死ぬより辛い苦しみを味あわされるのかもしれない。 嫌。 何でかって、あたしのプライドが嫌。