鶴来さんは余程の事でないと、部屋で眠らない。 むしろ、敵意丸出しで逃げ出す機会を伺っている人間の前で寝るなど、アホすぎる。 だから、眠た過ぎて判断力が無くなった時か、他に寝る場所が無いときに来る。 「静かにしろよ。」 なんてたまにご忠告貰ったりして。 ―――この部屋は何かと不便だ。 硝子が埋め込まれた引き戸の扉は、開閉する度甲高い音をたてる。二階だから誰かと出会す可能性が高い。 逃げ道なんて、無いに等しい場所だった。