思わずあたしは鶴来さんを見る。彼は無表情に、あたしを一瞥しただけ。 「あの…」 「お前、此処がどの辺りか分かっただろ。」 「へ?」 首を傾げるあたし、逃走未遂犯。若干この人の冷たさにも慣れてきてしまった。 “此処がどの辺りか”? 「……逃げただろうが。」 「ああ…いや、あの此処がどこかとかはサッパリ…」 「簡単には帰せねぇぞ。」 ちらりと見えた八重歯が、彼の凶悪さを醸し出す。 思わずあたしは出かけた口を閉じ、ぎゅ、と掌を握り締めた。