彼、鶴来さんは倒れ込んだあたしの背後に立ち静かに息を吐く。人間らしい仕草だな、と今実感した。


あたしはのろりと身体を起き上がらせる。鶴来さんに目を合わせることもなく。

そして逃げないように、鶴来さんに腕を掴まれた。


霧で、何もかもが真っ白だ。本当に此処は何処なんだろう。


「…………」


無言、無表情。

何一つ変わらず、ただ息切れの呼吸をしながら鶴来さんはあたしを引っ張っていく。