ああ、でも考えれば考える程に底なし沼だ。携帯も財布も何も持たない、ただ1人で走り抜けるあたし。

彼が諦めるのを願うしかない。祈るしか、ない。


――と、そう考えたと同時に足が盛大にもつれた。疲れから、煩雑な走りになったのだ。


どしゃ、と水溜まりに再び突っ込む。

視界は低くなり、霧のかかった住宅地が見えていた。そして、背後で足音。


「(終わった――…)」

「…………。」


何されるのだろう。立ち直れるような事ならいいけど。