ある時、あたしは再び日向君を呼び止めた。

軟禁生活が何日目かどうでもよくなった頃だ。怪我の痛みはすっかり減少し、傷痕だけが酷いような日。


日向君は襖のそばで立ち上がった体勢のまま、首をひねってこちらに目を向ける。

声もない反応だけれど、前のような威嚇もない視線。


「料理がとてもお上手になりましたね、とお伝え下さい。」


あたしが敢えて、彼に対して言わなかったのには理由がある。

あたしが敢えて、何も知らないフリをしたのには理由がある。