後悔はない。 処女だったら激しく泣いていたりしたかもしれないけど、あたしは幸い処女じゃなかった。 ただ――どうしようもない嫌悪感がある。 あたしは全てを飲み込んで、輔さんの背中に「あの」と声をかけた。 その背中に掠り傷や打ち傷のような痣があったけれど、あたしにはどうでもいい。 輔さんは振り返り、垂れ目を向けて首を傾げる。 「何?」 「――逃げます、今直ぐに。あたしの持ち物を返して下さい。」