あの人、一体何がしたいんだろう。だって、あたしを逃がさないって言った。帰さないって言った。 手の平を握り締めると、爪が肌に食い込んだ。暫く切っていないから、爪は伸びていた。 窓からは曇りの空が見える。 “彼”はこの空を見ようともせず、今もきっと何処かで目を閉じて苦しんでいるはずだ。 携帯、確認しないとまずい。やっぱり、逃げるしかないのかな。携帯の場所も分かんないし。 深く溜め息をついて、あたしは目を閉じて眠りに落ちた。