目の前に立つ火茂瀬をどかして、壁にもたれるホームレスに近付く。

「第一発見者の方と聞きました。お名前を教えていただけますか?」

ホームレスは僕の声に、俯いていた顔を面倒くさそうに上げた。

「……お前、刑事か……?」

ホームレスの口臭に鼻を押さえたくなったが、気を悪くされては困るので、耐えるしかない。

「そうです。四方木と申します。少しお話を聞かせていただけませんか?」

しゃがみ込んで警察手帳を見せる。

「やっと本物が来たか……」

ホームレスは呆れた様に溜め息をついた。

「本物……ですか?」