私は初乃咲萌のファンでした。

ファンクラブには入っておりませんでしたが、彼女のキラキラした笑顔を見ているのが好きでした。

ある日、仕事を終えた明け方でした。

ゴミを出していると、ゴミ捨て場に血だらけの女性が顔を伏せて座り込んで居ました。

血が付いているのに、怪我は見当たらないので不思議に思いました。

「大丈夫ですか?」

微かにアタマが縦に動きましたが、大丈夫そうには見えませんでした。

「今、救急車を呼んであげますからね」

そう言って胸ポケットからケータイを出そうとすると、突然彼女が立ち上がり、私の腕を掴んで来ました。

「どこにも連絡しないでッ」