涙目で口を開けたまま喋る火茂瀬から、拳銃を突き付けている萌に視線を移す。

「銃を下ろして、萌」

銃のハンマーが倒れているので、萌をあまり刺激しないように、口調を出来るだけ優しくする。

「私の名前はヒツキよ。お兄さん、何言ってるの?」

怒りと焦りの入り混じった口調の萌は、火茂瀬の口から乱暴に拳銃を引き抜き、僕に向けた。

「イテッ!」

拳銃が唇に当たったらしく、火茂瀬は咳き込みながら、口を押さえた。

「萌。お前はヒツキなんて名前じゃない」

「やめてっ」

萌は拳銃を持っていない左手で、苦しそうに頭を押さえた。