僕は駐車場で火茂瀬を見た時から、予想が確信に近付いていた。

「歌姫から貰ったカード。香水の匂いだと思っていたが、一瞬クラッとして、引っかかったんだ。様子の変わった火茂瀬を見て頭がフワッとした香りが催眠薬だと解った」

歌姫の待つ2階の部屋には、その香りが充満しているに違いない。

催眠術にかける事で、殺人を犯す仕事を簡単に引き受けさせ、殺人まで誘導していたのだ。

僕たちは犯人を殺すことで、知らない間に証拠隠滅をしてしまっていたのだ。

「昨夜の記憶はあるか?」

僕の仮説を話した後に、火茂瀬に問い掛ける。

「昨日は……」

火茂瀬は目を閉じ、唸りながら記憶を探る。