火茂瀬の住む高層マンションの前に着いたので、もう一度電話を掛けてみた。

「……やっぱり出ないか」

電話を切ろうと、耳からケータイを離すと、どこからか着信音が聞こえてきた。

“終了”とタッチすると、その着信音も消えた。

火茂瀬が近くに居るのだと確信する。

火茂瀬に電話を掛け直し、車を降りる。

何処かで鳴り始める着信音。

音が動いている。

ケータイが鳴り続けているのに出ないなんて怪しい。

僕は車から離れ、着信音を頼りに火茂瀬を探し始める。