紅茶を飲んでいた僕は隣に座る紗栄子さんに視線を移した。

『僕も会いたいです』とは言えなかった。

会いたくない訳ではないのだが、やはり会いにくい。

「萌が行方不明になって梓くんとも連絡あんまりしなくなっちゃって、子供が一気に2人も居なくなっちゃった気がして悲しかったわ」

紗栄子さんは自分の顔が映り込む紅茶を見つめていた。

「梓くんは私たちの息子なんだから。もう家族なのよ」

紗栄子さんは一筋の綺麗な涙を流していた。

雫が手の中のティーカップに落ちたのを見て、紗栄子しんは指先で優しく涙を拭った。

「いつでも来ていいからね」

僕の方を振り向いて笑顔を見せてくれた。

その笑顔は萌とよく似ていた。