萌の母親、紗栄子(サエコ)さんだ。

「お久しぶりです」

振り返って頭を下げる。

「本当に久しぶりね、元気だった?」

両手に花を抱えた紗栄子さんは僕を見て微笑んでいた。

僕は申し訳ない気持ちに駆られた。

「はい……まぁ、元気です」

紗栄子さんは洗い終わった墓に花を供え始めた。

「お掃除、ありがとうね。萌も喜んでるわ」

「いえ、そんな」