それに僕の目的は萌の両親に会うわけではなく、萌の墓参りに来たのだ。

萌が行方不明になって1年経った頃、萌の両親が空っぽの墓を建てた。

『初乃咲萌』と彫られた墓石の周りには、雑草ひとつ無かった。

墓石に汚れは見られなかったが、冷たい湧き水を汲んで来ていたので洗うことにした。

「久しぶりだね、萌」

灰色の墓石を撫でながら、話しかける。

中には何も無いのだから、話しかけても意味は無いのだが。

「なかなか萌の情報が無くて、君を見つけられない。萌……どこに居るんだ」

冷たい水を上から掛けてあげる。

「片腕でもいい。目でも何でもいい。萌の一部さえ見つかれば、君も犯人も探し出せるんだ」