赤いルージュが光る唇を火茂瀬は見つめていた。 ヒツキと名乗る歌姫の顔を良く見ると、仮面の下の肌が、火傷の様な皮膚の突っ張りが少しだけ見えた。 顔を弄った跡なのか、怪我をした跡なのか。 仮面は傷を隠す為のものだろう。 または、これだけの美声でスタイルが良く色気があるのだからストーカー被害を防ぐ為にも使っていそうだ。 「貴方のお名前は?」 いつの間にか火茂瀬の自己紹介は終わっていたらしい。 「僕は四方木です」 「四方木さんね。覚えたわ」 ヒツキの口元の笑みがぎこちない。