グラスを拭きながらマスターは渋い声で聞いてきた。 「車なので、お酒は……」 何を頼もうか迷い、メニューを探したが見当たらなかった。 「そちらのお客様は、いかがなさいますか?」 マスターは火茂瀬を見る。 よく見るとマスターの胸元には“Makihara”と彫られた金のプレートを付けていた。 「お任せで」 火茂瀬は慣れた様に答えた。 「かしこまりました」 マスターは素早く火茂瀬のお酒を作り始めた。