「文月奏からの紹介だ」

「文月か。次からはこの会員証を提示してくれ」

男から会員証を2枚受け取った。

『中に入れても歌姫に気に入られないとご対面は無理だからな』

男が居るので、文月の言葉に僕も火茂瀬も返事をしなかった。

会員証をコートの胸ポケットにしまい、男が開けてくれた扉の中に入る。

店内は薄暗く落ち着いた雰囲気で、危ない仕事が取り引きされる様には思えなかった。

カップルで呑んでいたり、スーツを着た4人の男が居たり、女同士で呑んでいるのを見つめる若い男など、様々な人間が静かに呑んでいた。

僕と火茂瀬は空いているカウンター席に座った。

「何になさいますか?」