シャツの袖に腕を通して素早く着替え終えると、萌は帰り支度を始めた。 『結婚出来なかったら困るしな。仕方ない、家まで送って行くよ』 萌の言っている事は正しいので、僕は強引に引きとめなかった。 『うん、お願い。ありがと』 僕も家を出る準備を始める。 コートを着てマフラーを巻き、更に萌は帽子とサングラスを着用した。 『忘れ物ないか?』 車の鍵を手に取り、踵の高いパンプスを履いている萌の背中に声を掛ける。 『大丈夫だよー』 『ん。じゃぁ行くよ』