幸はもったいぶるように言葉を切る。
薫は急かすように幸を見返した。
しかし、幸は続きを言わず、薫の手を引っ張った。
「実際に見るのが早いんじゃないかな。君の目で」
幸に手を引かれ、部屋の外に出た薫は、あまりの光景に絶句した。
外に青空は無かった。どんよりと重たく浮かんだ雲が広がり、薄暗く空気もどこか淀んでいる。そして、それを割り開くかのようにそびえた塔の先には、太陽の代わりなのか、まぶしい光がともっていた。
草木も極端に少なく、地面に胞子のようなものがへばり付いている。
スニーカーで足を踏み出すと、ぐにゃりと何とも言えない感触がした。
こみ上げた吐き気に、薫は思わず口を押さえた。
「なんだ、これ…」
荒廃した世界。そう表現するのが妥当であろう。幸が薫の様子を見て、ゆっくりと口を開く。
「君が生きた時代のその少し後に、大きな戦争があったのさ。後に第三次世界大戦と称されているけど、そのときに使った爆弾が多くの有害物質を含んでいてね。草木は枯れ、生き物は人間を含めて多くが死んでいった」


