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幸はいわゆる戦争孤児だった。家族は物心つく前に爆風に焼かれ、気が付くと孤児院に籍を置いていた。

不自由だと思ったことは無い。不幸だとも思わなかった。

自分以外にも、戦争孤児はたくさん居たし、なかには親の顔も知らず、首すらすわっていないような子どもも居た。特に不思議だとは思わなかった。

それが普通だったのだから。

孤児院で暮らす子ども同士、やはり似た境遇のため、皆が仲良く協力しながら過ごしていた。食べ物も少なく、互いに分け合いながら。お腹を空かせていても文句は言えなかった。自分の分を子どもたちに分け与えてくれている大人の存在があったからだ。

こういう環境で育ったからなのか、元来そういう性格だったのか、幸はもう十になるかならないかで、物分かりの良い子どもだった。