ア オ イ




「………っ……!!」


薫は自分の顔に熱が集まっていくのを感じて、思わず藍生に掴まれていない左手で顔を押さえた。

女性に護られるなど情けない話だが、彼女の目は真剣に薫に向けられていた。

命を預けろと、そう言ったのである。


「モタモタするな」

「あ、はい!すみません…」

「どの方向だ」

「えーと…右?いや…すみませんこっちです」


薫は藍生の手を握り直して駆け出した。

いくつかある出入口の中でも、ほぼ裏口として利用している薄暗い廊下を抜けて、外に出る。

まだ別人類の姿を黙視で確認することは出来ないが、薫は確信を持って言った。


「間違いないです。奴等はきっとこの方向から来ます。……藍生さん、あまり武装してないみたいですけど、大丈夫なんですか?」

「私の心配する暇あるなら、てめぇの心配してろ。要らぬ世話だ」


ズバッと切り捨てられ、薫はあからさまに落ち込む。

確かに自分は藍生より弱いかもしれないが、女性である彼女を心配してしまうのは男の性だと思う。

悔しさに歯噛みしていたが、不意に強烈な寒気が背中に走った。