ア オ イ




薫は、何故自分が藍生を抱き締めているのか、何故国王の言葉が酷く苛立つのかわからない。

胸の奥底に渦巻くこの感情をもて余している。

藍生はただ薫の腕の中で黙っているし、薫もこのあとどうして良いのかわからない。

完全に方向性を見失ってしまった。


「あ、あの……」

「何だ」


恐る恐る口を開いた薫を、藍生は見上げる。

自然と上目遣いになる藍生に、薫は何だかよくわからない気持ちになった。

きゅうんと何かが締め付けられるような、味わったことの無い、不思議な気持ちだった。


「て、てっきり、殴られるかと思いました…」

「…殴られたかったのか?」


訝しげに唸る藍生。薫は首を振った。


「違いますよ!……ただ、ちょっとびっくりしたって言うか…」


慌てた様子の薫に対し、藍生は冷静なままで、とん、と頭を薫に預けた。薫の心臓はどうかしてしまったかのように跳ね回っている。


「お前は温かいな、薫」

「………え?」

「……これは、嫌いじゃない」


甘えるように擦り寄ってくる藍生の髪から、何だか甘い匂いがする。薫はくらくらしてしまった。


(や、やばい…!!)


反射的にそう思った。