そう言った藍生は、無表情ながらどこか悔しさのようなものを滲ませている。
薫は「でも」と小さく声をあげた。
「仲間の死を一番近くで見ているのは、藍生さんなんじゃないんですか。悔しいと感じることもあるし、悲しみに暮れることもきっとあるんじゃないかって思います。…藍生さんは、感情を押し殺すことに慣れ過ぎているような、そんな感じがするんです」
「…感情、か」
藍生は噛み締めるように言うと、柵から背中を離して訓練兵を見た。
「私は兵器だからな。人間らしい情など、持つべきでは無い」
「そんなこと、無いでしょう」
藍生の言葉を即座に否定して、薫は彼女の腕を掴んだ。
「少なくとも俺は、あなた兵器だなんて思ったことは一度もありません。誰がなんて言おうと、俺にとってあなたは…」
そこまで言って、薫はふと思考が止まってしまった。
(俺にとって、藍生さんは何だって言いたいんだ…?)
不自然に言葉を切った薫を、藍生は無感動な瞳で見下ろす。ああ、瞳も青色っぽいんだな、と薫は他人事のように思った。
痺れを切らした藍生が、ため息まじりに言った。
「言いたいことがあるならはっきり言え」
「藍生さん!」
薫の言葉を遮るように、訓練兵の一人が彼女の名を呼んだ。
「国王陛下がおいでです!」


