皿洗いを終えて訓練場に行くと、銃撃の練習をする兵士を監視するかのように腕を組んでじっとしている藍生を見つけ、薫は小走りで駆け寄った。
「お疲れ様です!」
藍生はそんな薫を一瞥すると、興味が無さそうに再び訓練中の兵士に視線を戻す。
「皿洗いは終わったのか」
「ばっちりです」
隣に並ぶようにして、薫は訓練場の柵に背中を凭れさせた。銃弾の音が響く。
薫は先ほどの幸の言葉を思い出して、藍生を見た。
高い位置で一つにまとめられた髪は、肩に付くか付かないかのところでふわふわと揺れている。
室内の照明に照らされて、艶のある髪の毛。
そこで、薫は「あ」と声をあげた。訝しげにこちらを見てくる藍生と目が合う。
「藍生さんの髪って、黒かと思ったんですけどちょっと青っぽいんですね」
「…それが何だ」
不審なものを見るような目つきで見つめてくる藍生に、薫は慌てて首を横に振った。
「いや、あの…深い意味は無くて!…ただ、綺麗だなって思ったんです」
「は?」
「綺麗な髪だなって…。それだけです」
薫は言ってて自分で恥ずかしくなってきた。
異性の、しかもおそらく自分より年上の女性の容姿を面と向かって褒めるなど、初めてだ。
「あの…」
「何だ」
「切っちゃうの、勿体無いなと思います。それ」
ほとんど無意識に、薫はそう言っていた。


