「そういえば、俺ばっかりが慌ててたかもしれないです。藍生さんはいたって普通だったというか。その…俺の見ても何の反応もしなかったし」
反応されて悲鳴でも上がられたのならそれもそれで困るのだが、だからと言って何も意識されないのも複雑である。
しょぼくれる薫を見て、幸は笑った。
「でもさ、あいつあれで可愛いところあるんだよ」
「え?」
すすぎ終わった皿を受け取りながら、薫は幸の言葉に首をかしげる。どちらかというと尖った印象の藍生に、可愛さは想像がつかなかった。
「藍生さ、髪長いでしょ。あれね、私があの子の髪を褒めたからなんだよ」
「えっ!そうなんですか」
「本人は戦闘の邪魔だからって肩に付くころにいっつも切っちゃってたんだけど、あの子の髪ってさ、不思議な色してるんだよね」
「どんな色なんですか?」
食いついてきた薫にいたずらっぽく微笑みかけながら、幸は手際よく皿をすすいでいく。
「自分で見てごらんよ。きっと私と同じことを言うさ」
「なんだそれ。気になるじゃないですか」
「わはは!早くこの雑用を終わらせて、藍生に会いにいきなよ」
幸はさもおかしそうに笑っている。薫はいつもながら掴み所の無い幸にため息をついた。


