見かねた幸がすかさず口を開いた。
「まあまあ。前線に立てって言ってる訳じゃないよ。別人類の殲滅には君の力が必要だけど、戦ってほしい訳じゃない。探してほしいんだ」
「戦うのは兵士たちだしな」
亘も薫の肩を軽く叩き、安心させるように微笑む。幸は付け加えた。
「それに、藍生が居る限り私たちは負けないよ。たくさんの犠牲は覚悟しなきゃいけないけど」
そう言った幸の顔は、表面は笑顔に見えたが、酷く苦しげに歪められていた。
この組織の人たちは、こういう顔ばかりする。
薫はそう思った。
「とりあえず、今日のところはこれで帰ろうか。大きな異変は無いみたいだしね」
「了解」
幸は膝に付いた埃を払って、亘に振り返る。
薫も小さく頷いて後に続いた。
藍生の背中が目の前にある。別人類を薙ぎ倒しているあの姿からは想像できないほどに華奢で頼りなかった。
(この背中に…色々なものが乗っかってるんだ)
人類最後の希望。
対別人類の最終兵器。
(この人の…背中に…)
薫は無意識に固く拳を握りしめていた。


