食堂に向かうと、先に席に着いていた幸が薫に気が付いて手を振ってくる。
「おはよう。怪我はどうだい?」
「おはようございます。大丈夫ですって。ちょっとコンクリートが当たっただけですし」
「それなら良いんだけどね。平和な世界から急にこんな場所に来て、体がびっくりしてんじゃないかと思って、心配だったからさ」
薫はそれを聞きながら、思ったよりも自分が今まで冷静に居られていることを改めて思い出した。
確かに戸惑いはあったものの、パニックになったりはしていない。
別人類のような化け物を見ても、初めは恐怖に体が竦んだが、鉄の廃材で立ち向かっていったくらいだ。意外と自分は肝が据わっているのかもしれない。
幸と他愛ない話をしていると、藍生がコーヒーカップ片手にやってきた。
その場の雰囲気が少し締まるのを感じて、薫も話し声のトーンを落とす。そんな空気も気にしないのが幸である。
「藍生!おはよー。今日もコーヒーだけでいいの?」
「朝からうるさい。…コーヒーでいい」
「ほら、薫君の隣空いてるよ。座んなって」
ばんばんと机を叩いて藍生を促す幸に、薫は苦笑してしまった。
先日あんなやり取りをしたのだ、気まずくて仕方がない。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
いたって普通の返事があって、薫は安堵の息を吐いた。もしここで無視されようものなら立ち直れない気がした。


