ア オ イ




その日の授業は最悪であった。

社会の授業では、戦争をテーマにした生々しい映像資料を見せられ、感受性豊かな女子生徒が号泣したり、酷い者はその場で嘔吐したりと、教室内が騒然とした。

薫は「ゲロ吐くとか小学生か」と内心いらだったが、教師に指名され仕方なく雑巾片手に床を拭いていく。

その隣でバケツの水を変えてきた太が苦笑気味に声をかけてきた。


「結構やばかったな、あのビデオ」

「確かにな。重機で死体運ぶとか、相当だろ…」


山や森も、すべて丸裸だった。あれでは、虫も鳥も、野生の生き物は生きていけないだろう。

この後は体育かと考えるだけで、水気の染み込んだ雑巾がずっしりと重く感じた。


「薫、バケツここ置いとくな」

「ああ」


太の声に答えながら、薫はぼんやりと床に視線を落とす。

なんだか、頭がぼんやりとしていて陽炎のように景色が歪んでいる。


(疲れてるのかな…)


薫は頭をふって、冷たいバケツの中に手を突っ込んだ。