薫が外に出ると、駐在兵が素早く2丁目にできた穴を塞いでいるところだった。
藍生は転がした別人類の首を、地面に掘った穴に蹴りいれている。そこは高々と煙と炎が上っていた。
「藍生さん」
「…何だ」
薫はその背中がどうしてか頼りなく見えて、恐る恐る話しかけた。
「さっきはすみませんでした。…あの…怪我とかしてませんか?」
「…誰に言ってる?幸から私のことは聞いたんじゃないのか」
藍生は面倒臭そうに薫に視線を向けると、足を止めた。
「聞きました。…あなたが人類の最後の希望だってこと」
藍生は胡散臭げに薫を見上げて黙っている。周りの忙しないやり取りと、パチパチと炎が爆ぜる音が二人の間を通り過ぎていく。
藍生は別人類の頭を穴に蹴落とし、薫に背を向けた。
「私は兵器だ。奴らを滅ぼすためだけに作られた。それ以外に存在理由を求めることは許されない」
「違います」
迷い無く言い切った薫に、藍生は動きを止め、振り返る。
その顔には、何の感情も浮かんでいなかった。


