「結局は藍生に頼らなくてはいけない…この状況が最善だとも思えないんだけどね」
「……」
薫は、普段のんきにあっけらかんとしている幸の陰のある表情に、彼女の持つ葛藤や苦悩を垣間見た気がして、思わず何も言えなくなってしまった。
そんな会話をしているうちに、先ほど現れた別人類たちはただの肉の塊になっていた。
「お疲れ、藍生。先を急がなきゃ」
「私に労いの言葉など不要だ。…いつも言ってるだろ」
「そう言わずにさ」
車に乗りながら、藍生は冷たい表情を浮かべている。
何故か、薫にはそれが酷く切なく見えた。薫が黙っていると、不意に「おい」と藍生に声を掛けられた。
「は、はい!」
「声がでかい。お前、さっき奴らが現れる前に、“下に何かいる”と言ったな」
「え?」
薫は思わず首を傾げてしまった。それが、ほとんど無意識だったため、あまり覚えていない。
幸も思い出したように食いついてきた。
「そう言えばそうだよね!薫君、奴らの気配がわかるの?」
「わかるっていうか…」
急に、背筋に何か寒気が走ったのを思い出しながら、あれは何だったのだろうと唸る。


