ア オ イ




幸はハンドルを握り直すように手に力を込め、何処か遠くを見るような目をした。


「本当はね。こんなもの、何の気休めにもなりゃしないんだよ。いつも奴らの襲来でうちの兵士は死んでるし、街のなかは悲しみで溢れてるさ。いつ壊れるかもわからないあのドームに囲まれた狭い空間で、仮初の平和を享受してるのよ」

「……常に、死と隣り合わせってことですか」


薫は信じられないと思った。

戦争や兵隊なんて、テレビの向こうの話だとばかり思っていたし、いつ自分が死ぬかなんて考えたことも無い。


「……俺の生きてた時代と…全然違う…」


薫の呟きは、小さなエンジン音に掻き消されていった。




門に車が差し掛かると、重厚なそれはゆっくりと口を開けた。

まるで巨大な生き物が口を開けているようにすら見えて、何だか背筋がゾッとしてしまう。

巨大なドームにも似たその中に入ると、薫は短く声をあげてしまった。