翌日、薫が建物の外に用意されていた車に乗り込むと、幸が声をかけてきた。
「おはよう。昨夜はよく眠れたかな?」
「急にわけのわからない所に来て爆睡できるほど、俺図太くないですよ…」
実際のところ、薫はあまり眠れていなかった。ベッドもかたくて寝心地が良いとは言えないし、空調も節約のためなのか何なのか、微妙に寒かった。
体調を崩していない自分が不思議なくらいである。
「とりあえず出発するね!」
すっと音もなく車は走りだした。そこで燃料は何なのかが気になり、幸に尋ねてみた。
「この車はね、別人類の死体の腐敗の時に出るガスで走ってんの!凄くない?私が開発したんだけどさ…」
その後、マシンガンのように言葉の羅列が続き、薫は質問したことを激しく後悔した。藍生がまるで虫けらを見下すような目でこちらを見ていた気がしたが、薫は知らないふりをした。
車で走ること数分、ぐるりと取り囲むように建つ大きな壁――ドームにも見える――が見えてきた。
「あれは何ですか?」
「あれは街の門だよ。対別人類防壁として使ってるんだ。戦闘に向かない老人とか、体の弱い人たちを守るためのね」
「へえ…」
「この組織は立候補制なんだ。だから、組織に入らない人たちはこのドームの中で安全に暮らすのさ」


