「実は好きな人が出来たんです」
俺の後輩は、そう教えてくれた。


俺、小島優得(ゆいと)。中学3年生。
黒の短髪に細長の目。大人っぽいらしく、よく高校生と間違えられる。
性格は悪いと思う。
好きなものは、ライトノベル。



俺の後輩、鈴木紫乃(しの)は中学2年生。
少し金の入った茶髪は、胸ぐらいまである。
少し大きめの目で、大人っぽく、可愛いので、意外とモテる。
好きなものは、ライトノベルで、俺と話が合う。
好きな人は、いないと、教えてはくれなかった。


正直、心の中で、鈴木は俺のことが好きなんじゃないかなって思ってた。



だけど今日、鈴木からメールが来た。

「実は好きな人がいます。昨日、想いを伝えました」

心臓がドクンと鳴ってなぜか、手が震えていた。

「そうなんだ。誰?」

冷静を装い送信ボタンを押す。
なんでそれ、俺に言うんだよ。
1分と経たないうちに携帯が鳴った。

「あ、えっと、隣のクラスの横澤拓海君です。」

メールを心の中で読む。

『横澤拓海』

確か、2年生のバスケ部。
バスケ部の友達が最近、横澤っていう後輩が転部してきたと言っていた。
かっこよくて、優しくて、面白いやつだって言ってたな。

「ふうん。そうなんだ。付き合えるといいね。」

ただそっけなく、思ってもいないようなことを打つ。
なんだか、だんだんイライラしてきた。
でも、誰に対して苛立ってんのかは、自分でもわからない。

「先輩は好きな人いますか?」

次にきたメールに、心臓がドクンと鳴った。

「はぁ...」と小さくため息をついてからベッドの上に思いっきり携帯を投げつけた。
携帯が壊れて、今までのメールとか全部夢だったみたいに消えてくれたらいいって思った。
でも、床に投げつけずに、柔らかい布団の上に投げたあたりがなんとも、正直な俺の心だ。



(俺、鈴木のこと好きだったんだな...)

今更気付いても、もう遅い。

「うん、いるよ。」

俺はせめての最後の意地悪なメールを送った。

せめて、俺のこと、少しは気にかけてくんないかなって。
少し振り向いてくんないかなって。
ヤキモチ焼いて欲しいわけ?

俺はそっと携帯をベッドに置いて、ベッドに倒れ込んだ。


外は大雨で、なんだか少し笑いたくなった。
まるで、だれかさんの心みたいなもんだからさ。