我妻教育〜番外編〜

Tシャツは、孝さまにもお送りした。


喜んでくれたようで、現地で着用した写真も送られてきた。




―――――……‥‥


『お家元のご期待に添えるよう、精進致します』


先日、私は、正式に父に告げた。


『期待している』父も言った。



家元候補に名乗りを上げる。



覚悟を決めたの。


竹小路流華道家元一族に生を受けた運命の渦中に飛び込むことを。


最前線で戦うことを。


‥…―――…‥




“ゆっくりおいで”



孝さまが、私にくれた言葉を思い出す。



眉間をトントンするおまじないと一緒に、いつでも取り出せる心の入口に大切に置いてある。


日々の何気ない場面で前を向くことができる。


大切な、お言葉。



繋がれている。


あんなに遠かった孝さまが。


もちろん、まだまだ遠いんだけれど。



――だけど、いつか、憧れに手を伸ばせるかもしれない。