「嫌だわ、やめてよ、してないわ。

だいたい、一体誰に恋なんてするっていうのよ」


私は、あきれてオーバーにため息をついた。


白雪は、お構いなしに、さらにグイグイ詰め寄ってくる。


「それを私が聞いてるんじゃない!

夏休みの間に急接近したメンズいるんでしょ?!」



「急接近だなんて、別に綾人さんとは…」


言いかけて、口をつぐむ。


私の口から出た名前を白雪は聞き逃さなかった。



目の前で、ニヤーツと笑う白雪の顔を見て、しまった、と頭を押さえた。


案の定、白雪は突っ込んできた。


「綾人さん?!って確かグリーン☆マイムの本部の人だよね!?その人?!」



後悔先に立たず。


これからも、ことあるごとに白雪にからかわれるんだわ。



それにしても、どうして私ったら、綾人さんのお名前を口走ったりしたのだろう。



「確かに親しくなったのは事実よ。

素敵な方だし、尊敬もしている。

だけど、恋なんかじゃないわ。

世の中にはね、恋以外に楽しみなことだってあるのよ」


言い聞かせるように言ったけれど、


「恋以外に楽しみなことって?例えば何?」


白雪は疑いの眼差しで首をかしげた。



「―そうね、例えば、今の私なら…、そう、グリーン☆マイムよ」