きっと私を笑わせようと、綾人さんは、わざと自虐的に肩をすくめて笑った。



心配したいなら心配させておけばいい、だなんて。

面白いことおっしゃるのね。


思わずクスクス笑ってしまった。



長年溜めこんできた胸の奥の、えもいわれぬ重たかったものが、少し軽くなった気がした。


綾人さんて、不思議な人だわ。



感謝の意をこめて、綾人さんの瞳を見つめた。



冷たい陶器ではなく、包み込むようなとても暖かな深いブラウンの瞳だった。