我妻教育〜番外編〜

「やりたいことが、出来ている…かぁ。
う〜ん、それって難しい質問だよねぇ」


と、話の軌道を少しそらしてくれた。



人の気持ちを察して、何気なく補うのが上手い方だわ、綾人さんて。



「…ええ。難しいですわ。
そもそも私には、何もないですから」


「何も?」



「ええ。やりたいことが、何も。
何かに抗ってみるほど情熱を向けられる“何か”なんて見当たらないんです。

積極的に見つける気力がないのかもしれないけれど。

周りの人たちを見ていると、私ってつくづく空っぽだな、って最近思うんです」


「空っぽ…?」



「…やだわ、私ったら。何言ってるのかしら。
私の話なんてどうでもいいですわね」


別に今日は私の人生相談をしにきたわけじゃないんだから。

髪を耳にかけ直した。