長々と頭の中が混乱して、やっと答えに辿り着くと、サンドイッチを消費期限がまともなものに取り替えて行く。
 やっとの思いで取替えを完了すると、三つ程カゴの中に目立つものが入っていることに気がつく。
 ビール、裂きイカ、枝豆。
 私は『ジト~』とした目で看護婦さんを見つめると、看護婦さんは「ほらほら、堅いこと言わないでよ?規則破って出してあげてるんだし?」と私に奢らせる気満々である。
 もしかしたら。かすちゃんやまさひこ君より性質の悪い人に借りを作っちゃったかもぉ。
 そう少し悩みつつも、私はレジにカゴを持っていき、店員さんに会計をしてもらう。
 会計中、私がりんの頭をなんとなくに撫でていると「む?」という訝るような声が聞こえて、私は店員さんの方に向き直る。
 すると、店員さんは溜息を吐いて「これ。そこの看護婦さんのだろ?」とビールと裂きイカと枝豆をカゴから出しながら言う。
「はい。そうですけどぉ?」
「杏さん。なに社会人が学生さんに集ってんですか!」
 私が答えると店員さんが怒鳴り声を上げて、看護婦さん―杏さんを叱り付けた。
 それにりんは『ビクッ』と驚き、涙目になってしまい「大丈夫、大丈夫だから。」と私はりんの頭を撫でながら行く末を見守る。
「コージ君、何言ってんのよ!ただの学生さんじゃないわ!我が緑ヶ丘病院の患者さんと!その付き添いの人よ!」
「それがどうした!もっと性質が悪いわ!そもそも、あんた仕事中だろ!?酒なんて持ち込もうとするな!怒るのも面倒臭いだろ!」
 杏さんのどうしようもない言い訳に、店員さん―コージさんは間髪入れずに正論で返して、そのまま晩酌3点セットを会計から外す。
 本当に消費期限切れのサンドイッチを放置にしてる人なのかな?
「ちょっとぉ~。人の楽しみを~。」
 と杏さんは諦め切れないのか駄々を捏ねているが、コージさんは気にもせずに会計をすませていき「1262円になります」と私に支払額を教えてくれる。
「1500円からお願いします」
私がお金を渡すと「この人に付き合うとろくな目に会わないから気をつけな」とお釣りを渡しながら忠告してくれた。
「気をつけます」と苦笑いで返し、力なくコンビニから出て行く杏さんを追いかけて、私とりんはコンビニを出た。
 なんでかな?
 さっきまでは、あんなにりんのことで悩んで、余裕なんて全然なかったのに、今は空の星を見上げる余裕がある。
 夜風の中をぐったりとした感じで歩く杏さん。相も変わらずに怯えるりん。そして、未だに実感が沸かず、悩んだり開き直ったりしている私。
 三者三様。
 だから私は、私が出来ることをすればいいのだ。
 たとえ、おじさんとおばさんが亡くなってしまったという事実があんまりピンと来なくても、私は出来るだけのことをすればいいのだ。
 どんな形でも私の大切なりんを守れるのなら。元気付けれるのなら。慰められるのなら。
 そして、りんのいつも通りの笑顔が見られるのなら。
 私はいくらだって頑張れる。
 そう答えを出して、私はりんを連れて病院への帰り道を歩いた。