次の日の早朝、薬草を摘んでいる私の目に映っているのは、懐かしいあの光景。
掲示板を囲むようにできる人だかり。
舞踏会のあの日と同じ。
「ルニアちゃん、おめでとう」
私の姿を見つけた仲のいい夫人が、涙を浮かべて笑っている。
隣にいるネロリアも、すごく嬉しそうだった。
こんなにたくさんの人に祝福してもらえるなんて、幸せ者だ。
こんなにたくさんの優しい人々の中にいた私は、なんで気づけなかったんだろう。
お礼を言うと、夫人はそっと耳打ちした。
「王子様、今日は街においでになるって噂よ。会う約束でもしているの?」
「は、はい。今日の夜に婚約パーティをするので、その準備に、と午後に迎えに来てくれるそうです」
「思われてるのね、羨ましいわ」
「今夜のパーティ、是非来て下さいね」
「もちろんよ。貴女の婚約はとてもめでたいことじゃない。喜んで参加させてもらうわ」
夫人はウインクをすると、寝ぼけなまこで出てきた夫の元に戻っていく。
「私もあんな風に、幸せになりたいな」
「なに言ってるの、もう十分幸せでしょう?」
「…そうだったね」
ネロリアは人参色の長い髪を一つに結わえると、摘んだ薬草の籠を持って歩き出した。
「今日はパーティよ、あたしのおめかしも手伝ってよね。ルニアに負けないくらいいい人いつけるんだから」