「映画サークル!誰でも大歓迎だよー!…おっ、君可愛いじゃん!入ったら主役なれるよ~!ちょっと話ししよう!」


沙良がまた、腕を掴まれ、引っ張られた。
毎度の如く、沙良にはその手を振り切れる力はない。

あ、やばい!
柚はいつものように引き戻そうと沙良の手を引いた瞬間…




「ちょっと、嫌がってるけど?」

柚が手を引いた時には、沙良はもう蒼の腕の中にいた。
そして晃は、話しかけてきた男の腕を捻っていた。


「なんっ…何なんだよ、ちょっとサークルに誘おうとしただけなのに!」

腕を捻った晃が、冷たい笑顔で答えた。

「それが正しい誘い方ですか?腕引っ張るのが?まず、彼女の答えを聞いてからじゃないですか?それ、下手したら痴漢っていうんですよ、先輩。」

「それに、そんなサークル、興味ありませんから。そんな誘い方したら、興味ある人も来ませんよ。」


蒼は、ピクリとも笑わず、そう言い放った。

映画サークルの男は、晃が手を放した瞬間、そそくさと逃げて行った。




「大丈夫?沙良ちゃん。」

「ありがとう…蒼くん。」

「なーんで学校内なのにこんな人がいっぱい居るかねー。沙良ちゃん、気をつけなよ。」

「うん、晃くんもありがとう。」

「しょーがねーよな。元々そういうのではあんまり評判良くない大学だし。変な奴が多いってね。」


晃と蒼は、沙良を庇った。
柚よりも早く。

2人、男の子なんだ。
これからは、沙良はこの2人に守って貰えるんだ。あたしが居なくても。


「柚ちゃんも、大丈夫だった?」

晃は、柚の前に立って言った。

「あっ…あたしなんか全然!ほら、声もかけられてないし!(笑)」

「でも、こんな人たちからずっと沙良ちゃんを守ってたんだ?柚ちゃんは。昨日とか。」

「えっ…まぁ……」

「ダメだよ女の子なのに!これからは柚ちゃんも俺ら守るし、手出しちゃダメだよ?もう、俺らそこまで仲良しでしょ?なぁ、蒼。」

「うん。柚ちゃんも、気をつけなよ。」

「…うん。ありがとう。」


久しぶりに女の子扱いされて、自分の頬がみるみる紅潮していくのがわかった。




それから後、柚は余り喋れなかった。


蒼の腕に収まっている沙良を見て、少し羨ましいなと思ってしまった。

そんな自分にびっくりして、さらに何も言えなかった。




ただ前を歩く三人の、少し後ろを歩いた。