夏樹の家までの道のりは、
とっても長く思えた。

そんなに遠いわけでは無いけど、
暗くて吸い込まれそうで。
だけど前にいる夏樹に守られている。
そう考えただけで安心した。


「 あがって? 」
「 お邪魔します‥‥。」
「 階段上がって左が僕の部屋!入ってて!飲み物もってく!」
「 ぁ、うん。」
階段を上がり言われた部屋に入る。

ーー夏樹の部屋だ。

静かに黒のベットに腰をかけ、
私は周りに目を通した。
白と黒にまとまった綺麗な部屋。
整理整頓された机の上に、二つ写真が並んでいて私はそれを覗きこんだ。

それはどったも、髪の綺麗な小さい女の子と、20代前半の若い男の人の写真だった。

「 なあに見てんの? 写真? 」
「 これだれ? 髪長いし、 夏樹じゃないでしょ? 」
「 妹。 と、お父さん。 」
「 こんな前の? 」
「 それ好きなんだ。 はい、飲みな? 」
「 ありがとう。」
赤いカップに口をつける。
甘いココアだった。




「 夏生。」
長い沈黙を破ったのは夏樹の声だった。

「 ん? どうかした? 」
「 夏生は良いの?家族とこのままで。」
「 良いも何も無い。私が変えれる問題じゃないし。」
「 夏生は変えようとしないだけじゃないかな? 」
「 へ?」
「 変えれないなんて言い訳だよ! 自分から逃げたって何も変わらない。」
いつもの夏樹より、意思がこもってた。
私にすんなりと入ってくる言葉は、
夏樹の言葉だけなのかもしれない。

そのまま2人は眠りについた。




「 ‥、ぅ‥。」

目を開けると見覚えのある部屋だった。
ーー昨日泊まったんだ。
隣には私に腕を貸している、
大好きな夏樹の姿がある。

「 夏樹? 」

私の声では全く起きない。
立ち上がろうとも夏樹の腕が、腰にあって動くわけにもいかなかった。
ーーこんなに近くで見たこと無い。
さらさらした肌に整った眉毛。
高い鼻に荒れてない唇。
なぜたか分からないけど、私は自分の唇を微かに触れさせた。


「 足りないよ。」
目を開けた夏樹は私を引き寄せ、もう一度重ね合わせた。
「 おっ、起きてっ⁈ 、」
「 おはよ。 なんか食べる? 」
夏樹はずるい。笑顔で帳消しだ。
「 今日どっかいかない? いっつも図書館だからー‥, ゲーセンとか!」
「 行った事ない‥、行きたい!」

私たちはチャリに2人で乗り、
近くのゲームセンターに向かった。
赤と黒の四角い箱のような店。
入り口にはピエロさんが2人、チラシを配っていた。


「 いらっしゃぁ〜い! おっ, カップルさんか〜い?」
「 中入っても良い? 」
「 ど〜ぞ! カップルさんにこれをあげよう! ちゃんと取れよ彼氏くん! 」
そう言って渡してきたのは、UFOキャッチャーの無料券だった。
「やった!有難うございます!」
はしゃぐ夏樹に手を取られ,
中に入って行く。

プリクラ機 カーゲーム、
UFOキャッチャー。
わたしたちはできる限り遊んだ。