「聞いてる?恩田ンとだよ?」



あたしの笑顔に目を反らす守の息を飲んだ顔を見て、あたしは確かに笑っていた


「……」



「守さ、ソープ入って行ったでしょ」



「は?何を言ってんの??馬鹿か……」



「ハハハハッ!!馬鹿ね、馬鹿かもしれないね」



「くだらねぇ……」


「守の姿見たらしいよ?あれ?言わなかった?まみ、ソープで働いてるの」



「……」



淡々と出る嘘を真実のように固め、追及するあたしは、やっぱり悪魔なんだろう。



守の困った姿に快感を覚えていた。



「恩田サンと話してたんだよ。今ソープの店長って話したよな?」



「知ってるよ?でも、したら名詞なんて貰わなくない?」



笑いながら、話すあたしに守は人間を見るような目で見てはいなかった



「何もしてないんだ」



何処からでてくるか分からないほど、あたしは笑い転げた。




「流奈、働くから」


「何処で?」


「ソープで!!」


「お前、なに言って……」
「なんなら、守が行った店で働いてあげようか?」


「…………」


あたしは笑いながら、守を睨んだ


「うそだよ、しょうがないから飲み屋にするよ」


「……」


「借金、返すためにね」


すぐに、笑顔に戻り守から離れた






「それは、無理……」



「流奈も無理」



もう決めていた



守との別れを―――。



“それでも、夫婦になった事で作った借金だけは返さなきゃいけない。”



ただ、それだけだった。




“そして、少しでもお金を貯めたら、愛と千夏を連れてここを出よう”




これ以上、守といたら守もダメになる。




ここにいたら、愛と千夏の笑顔さえも奪って行く




そうあたしなりに考えた決断は揺るがなかった。








守が、断念するまで説得し続け2ヶ月。


あたしは、お水の世界に足を踏み入れた。