「流奈、働くから……」


タバコを吸っている守が何も言わず、灰皿にタバコを押し付けた



押し付けたタバコに力が入ってるのを感じ、あたしは守の顔を見れなかった。




守が今まで、あたしに言えず1人で悩んでいたんだろう。そう思うとやりきれない自分と、



相談すらしてくれなかった虚しさ……。



静かなリビングにまだ消えていないタバコの煙だけがあたし達の言葉の代わりに部屋中に充満して行く――




「それは、無理だ」



「なんで?じゃぁ、どうやって……」



「お前には、もう苦労かけたくないんだよ」


「守……」


「仕事は、いい。俺がなんとかするから、だから何も気にするな」


「………」


「その代わり、給料から返済していくから、それだけは我慢してくれ」



「………ごめんね」



この日、初めて守の優しさを感じた。


守の愛を少しだけ感じられた。





“必ず返してみせる!!!”



そんな気持ちで、守が1人で苦しんだ分、あたしも苦しめばいい。


我慢すればいい。



あたしに出来る事は節約だった。




出来る範囲の事は全てやり、返済の方へお金を足した



家にいて出来る仕事は内職だった。



守にばれないように、みんなが寝静まった頃、隠れながら寝ずに頑張った




少しでも足しにできたら……
そう思い考え、足しにしていたお金。



守は、人に会いに行く事が多くなったけど、それでも、あたしは何も疑わなかった。




最近、守があたしにかけてくれる言葉や、何気ない優しさで、あたしもだんだん守に対しての気持ちが変わって行ったんだ




借金というもので、

お金の尊さに気付きながらも、与えられたものが沢山あった


借金というもので、


繋がったものが沢山あったんだ






そう―――


あの時は確かにあった。



違うのかな、あたしがそう思っていただけなのかもしれないね。





…………気がしていたんだ。