「聞いてんの?もう子供じゃないんだからしっかりしなさい!!」


「分かってる」



「千夏連れて来るから、こっちに帰って来なさい」


あたしはその言葉を聞き電話を切った。



「愛?行こうか……」


「おうちに?」


不安だったんだろう。



愛だけを連れて来た事が……


笑顔で言う愛の言葉を飲み込みあたしは頭を撫でた。



「ばぁばのおうちだよ」


その後の愛の表情を見る事が出来ず、



あたしはタクシーを止めて行き先を告げた……。



実家に着いてから暫くたってお父さんとお母さんはしかめた顔をして家に帰って来た。



お母さんの腕の中にいる、小さな千夏を奪い泣き崩れた。



「守サン、千夏ずっと抱っこしてたわよ!お願いしますって渡されたわ……」



「……ごめんね、千夏」



あたしの腕の中で泣き止まない千夏が不安を一生懸命伝えているんだろう。



そんなあたしの横で、お父さんとお母さんはあたしにガミガミ話していた。




どんな言葉を聞いても

どんなに呆れられた暴言を吐かれても


あたしに“母親失格よ”の言葉を上回るものはなかった。




千夏を抱きながら、その横であたしに捕まりながら立っている愛の顔を



やっぱり見る事は出来ないでいた。


「だから反対だったのよ、結婚なんて、悲しむのは子供なんだから」



そんな言葉を聞いても
何も言い返す事が出来ないあたしは一言だけ言葉にした。



「別れるから」



そのあたしの一言に誰もが口を摘んだ。